住宅価格高騰が金融システムを揺るがす? 韓国中央銀行総裁、警戒感を示す

韓国銀行(中央銀行)の李昌ヨン総裁は、ポルトガル・シントラで開催された欧州中央銀行(ECB)フォーラムのパネルディスカッションにおいて、金融緩和政策を継続しながらも、住宅価格の急激な上昇が金融システムの安定を脅かす可能性について懸念を表明しました。
世界的なインフレと金利上昇の状況下で、多くの国々が金融緩和策を講じていますが、その一方で、住宅市場の過熱が新たなリスクとして浮上しています。韓国も例外ではなく、都市部を中心に住宅価格が軒並み上昇しており、当局は慎重な姿勢を崩していません。
李昌ヨン総裁は、「金融緩和策は経済を下支えするために不可欠だが、住宅価格の急騰は金融安定に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘。住宅ローン金利の引き上げや、住宅購入規制の強化など、金融市場の安定を維持するための措置を検討していることを示唆しました。
住宅価格高騰の背景とリスク
韓国の住宅価格高騰の背景には、低金利政策による住宅ローン借入の増加、都市部への人口集中、投機的な資金流入などが考えられます。これらの要因が複合的に作用し、住宅価格が実体経済から乖離した動きを見せています。
住宅価格の高騰は、以下のようなリスクをもたらす可能性があります。
- バブル崩壊のリスク: 住宅価格が過度に上昇すると、バブル崩壊のリスクが高まります。バブル崩壊が発生した場合、多くの個人や企業が損失を被り、経済全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 金融機関の脆弱化: 住宅ローン残高の増加は、金融機関の資産規模を拡大させますが、同時に不良債権リスクも高めます。住宅価格が下落した場合、金融機関は多額の損失を被り、経営が悪化する可能性があります。
- 富の偏在の拡大: 住宅価格の高騰は、住宅を既に所有している層に有利に働き、富の偏在を拡大させる可能性があります。
今後の展望
韓国中央銀行は、住宅価格高騰と金融安定リスクのバランスを取りながら、金融政策を運営していく必要があります。金利の引き上げペースや、住宅購入規制の強化など、様々な政策手段を検討し、市場の動向を注視していくでしょう。
国際的な金融機関も、韓国の住宅市場の動向を警戒しています。IMF(国際通貨基金)は、韓国の住宅価格バブル崩壊のリスクを指摘し、当局による適切な政策対応を求めています。
住宅市場の安定化は、韓国経済の持続的な成長にとって不可欠です。韓国中央銀行は、金融安定を最優先に考え、適切な政策対応を行うことが求められています。
写真は、2022年4月にソウルで撮影されたものです。(2025年 ロイター/SeongJoon Cho/Pool via REUTERS)