金融システムはなぜ脆弱なのか? 金融庁が警告するサイバーリスクとシステム障害の根本原因
2025-07-01

ITmedia
金融システムを揺るがすシステム障害、その原因と金融庁の提言とは
近年、サイバー攻撃の巧妙化やシステム依存度の高まりから、金融機関におけるシステム障害が頻発し、社会に大きな影響を与えています。金融庁は、2019年以降の金融機関で発生したシステム障害(サイバーインシデントを含む)を詳細に分析したレポート「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」を公開しました。本レポートでは、障害の根本原因、脆弱性、そして今後の対策について、警鐘を鳴らしています。
サイバーリスク増大が引き起こす深刻な問題
金融システムは、社会インフラを支える上で極めて重要な役割を担っています。そのため、サイバー攻撃の標的として非常に魅力的であり、攻撃の手口も日々巧妙化しています。金融庁の分析によると、サイバー攻撃によるシステム障害は、顧客情報の漏洩、取引の停止、そして金融市場全体の混乱を引き起こす可能性があります。特に、ランサムウェア攻撃は、身代金を要求することで事業継続を脅かす深刻な問題となっています。
システム障害の根本原因:複雑化と依存度の高まり
金融庁のレポートは、システム障害の根本原因として、以下の3点を指摘しています。
- システム構成の複雑化: 金融機関のシステムは、長年のシステム改修や改造型システムの導入により、複雑化が進んでいます。この複雑化は、潜在的な脆弱性を生み出し、障害発生時の原因究明を困難にする要因となります。
- クラウド依存度の高まり: クラウドサービスの利用は、コスト削減や柔軟性の向上に貢献しますが、同時にセキュリティリスクを高める可能性があります。クラウドプロバイダーのセキュリティ対策に依存する部分は、金融機関自身のコントロールが及ばない範囲を拡大します。
- 人的要因: システム運用における人的ミスや、サイバー攻撃に対するセキュリティ意識の不足も、障害の大きな要因となっています。
金融庁からの提言:ITレジリエンス強化の必要性
金融庁は、これらの分析結果を踏まえ、金融機関に対して以下の提言を行っています。
- サイバーセキュリティ強化: 最新の脅威に対応したセキュリティ対策の導入、従業員へのセキュリティ教育の徹底、そしてインシデント発生時の迅速な対応体制の構築が必要です。
- システムアーキテクチャの見直し: システム構成の簡素化、冗長性の確保、そして障害発生時の影響範囲を最小限に抑えるための設計が求められます。
- クラウド利用におけるリスク管理: クラウドプロバイダーとの契約内容の精査、データ保護対策の強化、そしてクラウド環境におけるセキュリティ監視体制の構築が必要です。
- IT人材の育成: システム運用・保守、セキュリティ対策、そしてインシデント対応に必要な専門知識を持つIT人材の育成が不可欠です。
今後の金融システムを守るために
金融システムは、国民生活に不可欠な基盤です。金融庁のレポートは、その脆弱性を浮き彫りにし、早急な対策の必要性を訴えています。金融機関は、レポートの提言を真摯に受け止め、ITレジリエンス強化に向けた取り組みを加速させる必要があります。そして、私たち一人ひとりが、サイバーセキュリティに対する意識を高め、情報リテラシーを向上させることで、金融システムを守るために貢献していくことが求められます。